逃亡者

何故、逃げなければならなかったのか。小さなビルのロビー。
コンクリートの通路の仕切り。ブルーのガラス張り。

追っ手がかかる寸前に外してあった南京錠の扉から地下通路に入った。見つからないように内側から戸を閉めようとしたが閉められない。
警備員に見つかりそうになった。
近寄ってきた二人の年寄りの警備員は、内側壁ぎわに寄り添うオレに気付かず

「なんだ。戸があいてるぞ」

と戸を閉め、外側から鍵をかけた。地下通路は暗くなった。
数十メートルほどの通路の先に出口の明かりが見える。
右の出口からは誰だかわからない先行者が、俺は上の半円形のマンホールから、
外へ這い出た。這い出た所は、赤いシートのオープンカーの座席だった。
逝ったはずの父親が、釣竿と釣り道具を持って待っていた。
父は、投げ竿の束の入った長い竿袋とリールを持って、
釣りへ出かけていった。

俺は、残りの釣竿の袋2つを左脇に抱え、右手に釣り道具の入ったバッグをふたつと
バッカンをぶら下げて、古い家の立ち並ぶ住宅街の中の垣根と板塀の小道を歩き始めた。

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